沈まぬ太陽 アフリカ編 

 日本航空の会社員をモデルにしたノンフィクションに近い国民航空会社勤務の主人公、恩地元(幼い子を持つ妻子持ち)は一流大学出身で予算を扱う花形部署に配属し、本来であればエリート人生を歩むはずだった。
しかし労働組合委員長に強引に押し付けられ、労組の中身が御用組合であるのを知った恩地は正義感から物言う労組に変えていき賃上げ、労働時間の短縮を交渉し待遇の改善を図り労働者側から感謝される存在へとなっていったが経営陣側から疎ましく思われ中東、アフリカへと僻地への不当転勤を10年間続けることになる。
経営陣側と労働者側は立場が違うわけだからお互い納得するのは難しいとは思うけど本来、現場の声は貴重な意見であり改善することにより、企業の成長に繋がることもあると思う。だから話し合いが重要なはずだけど、やはり煙たいと思う幹部がいて、どうやら国民航空は上司へのゴマスリが出世する組織だったようだ。
半官半民の会社にとっては官僚にも握られ経営陣は板挟み状態だったのも社員を押さえつける原因かもしれない。そして経営陣側は労組の弾圧にかかり不当転勤や窓際族と追い込む見せしめ人事を行い、物言う労組とは別に経営陣側とグルとなる新労組をいわゆる御用労組の規模を大きくしていくようになる。すなわち経営陣側に何も言えない状況をつくっていく。
今の時代は労組が強すぎる傾向があるけど、GHQが労組をつくらせたのだから、当時は日の浅い労組の力は弱かったと思うし、労組を率いてる恩地は組合員から感謝されるも、やはり経営陣側についたのが得策かと思う仲間の裏切り等を経験し権力欲、人間の汚さを経験しながらの行動は勇気あるのは違いないけど、いつの時代も犠牲者を出し進化していくものなのかもとも感じた。
ただ、民間企業にすれば半官半民企業よりは対等に近い労使交渉ができるのかもと思った。
やっぱこれからは全ての業界で自由競争が出来る民間企業にしていき政治家、官僚は最低限の事だけ監視してるのが国民の為であり国家が補助金を配分し管理するのは明らかに経済の操作をしてるだけではと感じた。
それにしても僻地に10年はキツイかも。家族も犠牲にさせるのは恩地の正義感とプライドの、すり替え論的な見方もできるかな?
中東での生活の不便さ、特に住居の中に訳のわからん害虫が大量に発生するのは敏感肌の日本人には恐怖を感じるのでは…。不景気から立ち直れず日本はダメだと言われてるけど大量の害虫が出る住居と身分差別がある国に比べたら全然、平和で豊かだと思った。だからと言って、日本が、このままで良いとは思わないけど、最低限の衣食住に関しては中東に比べれば全然いいでしょう。
最後はアフリカのナイロビでの単身赴任で、恩地はサバンナでのハンターを娯楽にしアフリカ象、ライオン、豹の剥製を飾り鑑賞するようになっていく。標的にするのは象なら立派な牙をもちライオンなら立派な鬣をもつ獣を狙い、銃の手入れをする姿となる。権力を武器にする会社の仕打ちでの生活環境の変化からなのか異様な容貌と体臭に恩地はなっていき、人間が環境に順応していくのは弱さなのか強さなのか考えさせられた。
そんな僻地勤務の中、国民航空は事故が度重なり社内の体質に政治家、マスコミから不信感を受けるようになり労組を弾圧してることが公になってしまった。そして恩地は証人喚問で国会へ出向くこととなった。
ついに恩地はアフリカから本社への移動が命じられたとこでアフリカ編が終わり、さて次は史上最大の墜落事故御巣鷹山編へと続く。